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長村羅『交点を結ぶ〜夏の大三角形〜』

  • 執筆者の写真: Keiko Hisaoka
    Keiko Hisaoka
  • 2015年9月1日
  • 読了時間: 3分

『交点を結ぶ〜夏の大三角形〜』@心斎橋酔夏男

まめ(パンパンの塔)/長村羅(ゆれる)/伊藤洋平(Theキャンプ)

いつも思うことだが、長村羅の歌声が響いた瞬間、私は何かに包まれたような感覚に陥る。彼の歌声は切なくて、そして、とても優しい。夏が終わろうとしている8月31日。会場となった心斎橋酔夏男は、人の家のような居心地の良さと大阪らしい雑居さのある場所だった。

「夏休み最後の日にパンパンの塔とTheキャンプと大阪に来れて嬉しい」といった即興の歌を披露し、会場を沸かせる。長村はいつもライブごとに歌詞が変わる。二曲目の「シーセイド」でもそうだった。すれ違いを歌ったこの曲。「まだ間に合うよ」と変えた歌詞に、すれ違った人を思い出した。「彼女は言った 面倒臭いって言った」とオーディエンスが共に歌う際、長村が「楽しそうやな〜でも切ない感じで!こんな感じ!」と細かく要求し、観客が笑う。暖かい空気が流れる。

「ファン投票では間違いなくBPMが一位だろうと思っていたのに、9割がこの曲でした」と、「魚に羊、化ける草」を演奏。「いっちゃん最初に気づいた奴からさ 順番に抜けていくとしよう 分かったつもりが積もってしまった 結局ハッピーエンドってなんだそれ」。人の気持ちを伺い知るのはひどく難しい。ましてやライブ会場でしか知らないアーティストの気持ちなど、ファンに知る由もない。それ故、この曲は深く聴き手の心に突き刺さるのだろう。

「パンパンの塔も、Theキャンプも、やめてほしくないから」と歌ったのは、盟友、新世界リチウムに向けて書いた「君の尸の上で歌うよ」。こんなにも切ない歌が他にあるだろうか。「面白おかしいあるある・共感」を歌にするバンドは今の流行りともいえるが、見せてはいけない弱みや悩みをこんなにもあからさまに歌にするバンドは見ない。外はもうすっかり夜で、雨の降る音だけがBGMのように窓越しに聴こえる。涙が零れた。

「これはゆれるではやりません。長村羅だけの、曲です」。そして、湿った雰囲気をかき消すように演奏された「辞書にない」。「最近、東京に来てから、言いたいことが言えなくなっちゃったんですよ。でもそれをどうしても自分のせいにしたくなくて。今日は決意しようと思って歌います」と話す。ライブの時は違う世界にワープできても、日々に戻れば、嫌なことも、しんどいことも、どうしようもないことも数えきれないほどある。どれも全部結局は自分のせいだと思って、また苦しくなる。苦しいとは意地でも言えない。「昨日のせいにしよう 悩むなよフラットでいこうぜ」。帰り道、イヤフォンから流れる声に、明日も生きようと思った。

セットリスト

01.echo

02.シーセイド

03.sweetyou

04.BPM

05.魚に羊、化ける草

06.君の尸の上で歌うよ

07.辞書にない

08.冷たい月

 
 
 

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