ココロオークション
- Keiko Hisaoka
- 2016年3月28日
- 読了時間: 3分
3月に全国11カ所で繰り広げられた、ドラマチックアラスカ、ココロオークションらによる対バンツアー「はじましぶりツアー2016春 ~雨、ときどき雪~」。2015年3月27日に行われた京都MUSE公演でのココロークションのライブ模様を取り上げる。セミファイナルとなったこの京都公演は、チケットソールドアウト、当日会場は入り口まで余すところなく人で溢れていた。

SEとともにメンバーがステージに登場し、“ヘッドフォントリガー”で幕を開ける。恐ろしいスケジュールと一筋縄ではいかなかったツアーを乗り越え、グンと進化した彼らがそこにいた。軽快なギターリフとともに始まる"ターニングデイ"。「自分が良いと思った音楽を鳴らしたい」と語るステージは、自分を貫いていく姿を体現しているようだった。ココロオークションのキラキラした世界観と、力強く優しい粟子の歌声の良さが最大限に詰め込まれた"ここに在る"。笑顔で自由に音楽を楽しむオーディエンス。二曲目にして既に暖かく幸せな空気が会場を覆っていた。忘却の哀しさを綺麗に奏でるバンドは、誰よりも今、目の前にいる人を大切にしようとする。多くの人と出会い、多くの別れを経験したからこそ描写が輝くのだと思う。
次に演奏されたのは”夢の在り処”。飛び跳ねて楽しそうにギターを弾くテンメイの姿に、観客の笑みが零れる。「誰も見捨てない音楽を鳴らしたい」。幸せにするとかそんな大袈裟なものではなく、ただ、そっと隣に寄り添う。誰かが見てくれているだけで、頑張れることだってある。そんな、誰も知らないところで頑張っていることを、ただ、知ってあげられる、見ていてくれるような優しさを持つバンドだと感じた。
「生きててくれてありがとう」。粟子の言葉に涙が溢れた。好きな音楽を全身で浴びる瞬間、ここに来て、この目で観て、この耳で聴けることすら愛おしくて奇跡のように思える。ここまで頑張ってきて良かった、生きててよかった、と、いつも本気で思うのだ。嘘でもなんでもなく、割と本当にそうなのだ。ライブは、頑張った自分への一番のご褒美になる。
夏の三部作として知られる彼らの代表曲、”蝉時雨”。会場全体に澄み切った空気が広がる。「自分の信じた音楽が流れていることが嬉しい」と、メロディーに乗せた即興のパフォーマンスの後披露された新曲「フライサイト」。「操縦桿 握ったら 会いたかった自分に会いに行こう」。シンプルなのに心の奥に届く言葉の数々。大きなステージが似合う曲だった。きっとこの曲が、ココロオークションをもっと広いでっかいステージに連れて行ってくれるような、そんな気がした。毎回最高を更新していく様子は、見ていてわくわくする。目が離せないというより、今観ておかなくてはいけない、と、ある種の必死さのほうが強い。彼らはここからまたどう化けていくんだろう?と思わずにはいられなかった。
今日、初めてココロオークションのライブを観て泣いた。堰を切ったように目の前が滲んで、自分にびっくりした。いわゆる「正統派歌モノ爽やかバンド」、私が普段聴く音楽とは真逆にいるものだと信じて疑わなかった。このバンドの歌で、泣く日が来るだなんて。「こんなバンドだったっけ?」、その一言に尽きる。
彼らの音楽を聴くといつも目の前に綺麗な水彩が広がっていく。その芯にあるのは、強い赤だった。彼らはまちがいなく、ロックバンドだ。そう確信させてくれた夜。
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